四方山話
 

  最新作「黒織部茶碗」久々に良い一碗が出来た。成形から焼成完成までの工程で、人為を超えた見所が付加され、表情豊かな茶碗に仕上がった。

  抹茶碗、掌に乗る程の大きさのものの中に、多様な美しさや精神性が凝縮され、その魅力は尽きない。実際にお茶を点て使い、じっくり鑑賞するだけでも実に優雅で知的な世界だが、私はその制作場面にも立ち会えるのだから、茶碗愛好者として、これ程恵まれた環境はない。

  制作者の立場からすると、茶碗全体の姿・かたち、口作り、見込み、高台削り、意匠(絵付け等)、釉調、焼成などこれら幾つもの高いハードルを其々クリアーし、その全てを満たす名碗を生み出すことは至難の技であることを、過去の経験から思い知らされている。

  かつて岡部嶺男さんの粉青瓷茶碗と黒茶碗2点を借り受ける機会があった。目の前に置き、縦横360度回転させながら、その茶碗の写しを何日も試みたがまったく歯が立たない。今思えば土・道具も違えば作者との技量・感性も大きく異なり、写せるはずがない。ただこの写しの作業を通して、モノの本質を捉える感覚を大変勉強させて頂いたような気がする。

  茶碗は、作者の手にする者への気配りと人為を超えたその美しさや精神性が、凝縮され表現されたモノ。この根源を意識しながら、一方で既定概念に囚われない今この時代の茶碗を生み出してみたい。そして、最新作「黒織部茶碗」これを超える一碗求め、また今日から土に向かってみようと思う。
                 


                                                    (06/17/2009)


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