四方山話
 

  今回の最新作3点は、只今開催中の茨城・川上美術クラブでの個展に出品するため制作したものだ。この展覧会はお世話になっている東京神田にある壷好さんの依頼を受けたもので、そんな関係から久々に壷好社長の石井さんと会場で数日ご一緒させて戴いた。

  石井さんという方は、日本橋高島屋美術部入社後、現会社創設以来約40年に渡り一級の美術工芸に携わってこられた方だ。金重陶陽・荒川豊蔵・石黒宗麿・・・加茂田章二・藤本能道・・・といった現代陶芸界をリードされてきた先生方やその先生方の作品を収集するコレクターとも幅広く交流されてきた方でもある。

  石井さんによると、今や物故作家になられた上記先生方が存命の頃は、作家やそれを取り巻くコレクター、商う百貨店・美術部員も実に大らかで懐が深く、「何はともあれ美術品・工芸品が好きでその造詣も深い」方々で活況を呈していて、実に面白い時代であったという。

  一例その頃のエピソードを挙げると、石井さんが高島屋美術部入社間もない頃、ある作品を高名なコレクターに収めたその夜、その方から理由も告げられず突然とある料亭に呼び出しを受けたそうだ。何か不始末でもしたのかと恐る恐る出向いてみると、部屋の床の間に納入した作品が飾ってあり、そのコレクター曰く、「今日は実に良い作品が手に入ったので、これを肴に二人で一献やろう!」と若い石井さんを招いて下さったとの事。そこでは様々な美術談義が展開し、実に多くの事を学んだと、今もその時の事を鮮明に記憶されているそうだ。

  作り手、それを商う人、その作品を求める人この3者が気持ちよく交わることで、美術の世界は高みを目指して益々発展するのではないかと、石井さんのお話を色々伺う中でそんな思いを強くした。美術芸術を取り巻く環境は日々厳しくなっている今日だが、今もその本質を理解し楽しんでおられる方々もいるはずで、これらの方々には是非次の世代にその魅力やおもしろさを伝え、美術芸術に目を向ける若い世代を育てて戴きたいと願わずにいられない気持ちになった。                  

                                                    (11/03/2009)


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